失語症(aphasia)とは、脳の損傷により、自分の意図を言葉で表現することが出来ない、また、相手の言葉が聞こえてもそれを理解できないなどの「話す」、「聞く」、「書く」、「読む」、「計算する」の言語モダリティが障害を受けてしまう症状です。

原因のほとんどは脳梗塞や脳出血などの脳血管障害で、全体の90%以上を占めます。

脳の損傷された度合いにより症状の出方も違い、軽度では時々物の名前が思い出せなくなる程度ですが、重度では意味のある言葉が全く話せず、発声はうなり声のようになり「はい」、「いいえ」といった返事も困難になります。

また、失語症は話し言葉だけでなく、相手の話を聴いて理解する力、文字を読む力、文字を書く力も障害を受けてしまいます。

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誤解されがちなこと

「失語症」という名前を聞くと、「話すこと」ができない症状と思われがちです。そのため、話しができないならば、筆談や50音表の文字を指差しでコミュニケーションを図ればよいと受け取られることがしばしばあります。また、言い間違えたことばを何度も言い直させたり、50音表を1文字ずつ音読させたりと独自の訓練を行う方もいます。

しかし、失語症は、「話す」「聞く」「読む」「書く」の障害のため、「話す」側面だけに目を向けての筆談でのコミュニケーションや言い間違いの指摘は失語症状の「誤解」であり、好ましい接し方ではありません。

しっかりと担当言語聴覚士と話しをして、正しいコミュニケーション方法を学んでいく必要があります。

損傷部位による症状

言語を司る機能は、ほとんどの人が脳の左半球に局在しています。左脳の中でもおおまかに前方が言語運用にかかわる機能を司り、後方が言語理解にかかわる機能を司ります。それぞれ損傷された部位により出現する失語症の症状が異なります。

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ブローカ失語

ブローカ領野を中心とする前方言語領域が損傷を受けた場合に出現する失語症。
たどたどしく、遅く、流暢性に欠けた話し言葉が特徴で、聴こえの理解力は比較的保たれています。読む力も比較的保たれいますが、書く力に関しては特に仮名文字が困難になります。
軽度の場合は、名詞が言えない程度ですが、重度の場合はことば自体が出なくなってしまいます。

ウェルニッケ失語

ウェルニッケ領野、角回などの後方言語領域が損傷を受けた場合に出現する失語症。
滑らかで流暢ですが、中身がなく作ったような話し言葉が特徴で、聴こえの理解力も著しく障害されてしまいます。書く力はあるが、統語的誤りがあり、長い文や構造的な文の作成は困難です。読む力は聴こえの理解力に比べれば良好な場合が多いです。

全失語

前方および後方言語領域にわたる広範囲の言語領域が損傷を受けた場合に出現する失語症。
流暢性に欠けた発話、重篤な聴理解障害が特徴で、有意味な発話はほとんどなくなってしまう最も症状の重い失語症です。

失語症になっても保たれる側面

気持ち・態度

ことばでは表せなくても日常的なあいさつや感謝の気持ち、お詫びの気持ち、その場にふさわしい態度をとることはできます。

人格

その人らしい人格は変わることはありません。

記憶

出来事の記憶や時間や場所の感覚は変わりません。質問されてことばで答えられないことがあっても、カレンダーや地図などを見せたり、筆記用具を用意したりすると、正しく答えることができます。

判断

状況の中での気づきや判断はできます。いつも来ている人が休んでいるとどうしてなのかなとか、約束の時間に到着できるように早く出ようなどと家族に身振りや指さしやことばで伝えようとします。

関心事

社会情勢や様々な出来事にも関心を持っていますし、それに対しての意見も持っています。また以前やっていた趣味などは同じように楽しむことができることも多いです。

失語症と一緒に起こりやすい症状

麻痺

失語症は脳の左半球にある言語中枢が損傷されるために起こるので、右片麻痺を伴うことが多いです。日常生活の様々な行為が難しくなります。

半側空間無視

視野障害、右半側空間無視を伴うことがあります。食事のときに食べ残してしまったり、障害物にぶつかったりします。

集中力低下

集中力が低下して疲れやすくなります。病前には何気なくやれていた人の話を聞く、自分の思っていることを伝えるということにかなりの集中力を必要としてしまいます

間違えやすい疾患

運動障害性構音障害

言葉を話すのに必要な唇、舌、声帯など発声・発語器官の麻痺や、運動の調節障害(失調)によって発声や発音がうまくできなくなる障害です。

喚語困難などの言語症状がないこと、嚥下障害などの発語以外の運動障害もみられる点が失語症との違いです。

※ 詳しくは運動障害性構音障害をご参照ください。

失声症

声帯の異常や精神的ストレスが原因により声が出なくなる疾患です。

声が全く出ない場合やぼそぼそ声は出せる場合などがあり、声が出る場合に錯語や喚語困難は見られず、また、筆談によりコミュニケーションが取れる点が失語症との違いです。

認知症

脳の器質的病変により、一度獲得された知能が持続的に低下し、それによって日常生活に支障をきたす疾患です。

記憶は常に障害され、失語、失行、失認及び遂行機能など認知機能の障害が重なります。また、認知症は記憶に加えて、視空間認知や構成能力なども低下している点が失語症との違いです。

この記事の投稿者

宮崎 関大
宮崎 関大
STナビ管理人。言語聴覚士。