摂食障害(拒食症と過食症)

神経性食欲不振症(拒食症)、神経性過食欲症(過食症)、特定不能の摂食障害は、食行動の異常に基づく原因不明の難治性の疾患です。

神経性食欲不振症(拒食症)

神経性食欲不振症とは、その名の通り、食べることを拒む病気で、特に思春期・青年期の女性がかかりやすいといわれています。神経性食欲不振症には、2つのタイプがあり、1つは不食を徹底する「制限型」、もう1つはむちゃ食いをともなってもそれに対する排出行為(自己誘発性嘔吐や下剤の服用)で代償しながら低体重を維持している「むちゃ食い/排出型」です。

特徴としては、まわりから見たら痩せていると思うような体型であっても、本人は太っていると感じて食べ物を食べなくなっていきます。そのため、みるみる体重が落ちていきます。しかし、そんなに痩せているにもかかわらずとても元気で活発に動き回ることがあります。

症状

症状としては食べ物を受けつけなくなることからの体重減少です。また、それにともなって身体にもいろいろと異変が起きます。

思考力の低下
食事を取らないために脳が必要な栄養素を供給できない状態になります。すると、思考力そのものが衰えてしまい、物事を柔軟に考えることができなくなります。
虫歯
嘔吐の繰り返すことで、胃液が歯のエナメル質を溶かしてしまいます。その結果、虫歯になりやすい状態になってしまいます。
低カリウム血症
嘔吐や大量の下剤を服用したことが原因で、ひきつりや体に力が入らない、筋肉がマヒするなどの症状があらわれます。
生理不順
体重が減っているときは栄養不足とストレスなどによって生理不順になることがあります。体重が少ないために起こるものであれば、体重がもどると生理もまた始まります。
吐きだこ
嘔吐するために指を喉の奥まで入れることで、前歯が手の甲にあたり皮膚がただれてしまいます。この皮膚のただれた状態を「吐きだこ」と呼び、むちゃ食いと嘔吐を繰り返す拒食症の方に多くみられます。
毛深くなる
やせると体温も下がってしまいますので、体が自らを守ろうとしてうぶ毛が濃くなるといわれています。
むくみ
食事によるタンパク質の摂取が不足して顔や足にむくみが出てきます。このむくみを「太った!」と勘違いして、さらに拒食や過剰なダイエットをする悪循環が生じることもあります。

その他に社会的孤立、抑うつ、不安、強迫症状、完ぺき主義、頑固さ、性的関心の低下、盗み食い、独特の食べ方(刻んで食べる、油ものを避ける、食事開始まで時間がかかる)などが見られます。

神経性過食欲症(過食症)

神経性過食欲症とは、食べ過ぎてしまう病気です。一般的な「大食い」「やけ食い」とは異なり、とにかく限度なく食べ続けてしまい、自分で抑えようとしても手が勝手に食べ物を口に運んでしまいます。神経性過食症は「排出型」と「非排出型」の2つのタイプがあります。

排出型では、飲食の後に自己誘発性嘔吐や下剤の服用により摂取した飲食物をすべて排出してしまいます。非排出型では、飲食の後に絶食や過度の運動により体重の増加を防ごうとします。

特徴は、とにかく食べることであり、食事をおいしいと感じることはありません。ただひたすら口に食べ物を詰め込み、そして嘔吐や絶食を繰り返します。過食症は拒食症から移行するケースが60~70%と多く、体重も必ずしも肥満ではありません。標準体重の患者も多いです。拒食症と過食症の区別は、正常最低限体重を維持しているかどうかです。

症状

症状としては、大量に食べることによる体重の増加です。それにともなって、色々な身体的異変が見られます。

悪臭
頻回の嘔吐により、吐しゃ物の臭いが体に染み付くようになります。

その他、拒食症と同様に虫歯や生理不順などの症状、抑うつ、不安、気分の易変動、衝動性などが見られます。

特定不能の摂食障害

過食症と同じような過食があるのですが、体系や体重へのとらわれはそれほど強くないけれど過食をコントロール出来ない自分に罪悪感を抱く「むちゃ食い障害」、体重は標準体重の80%未満だけれども生理はある人(生理の項目以外は拒食症の診断基準を満たす人)、過食の頻度が週に2回以下だけど長期間持続している人、過食はしないけど体重を減らそうとして嘔吐したり下剤を乱用したりしている人、大量の食物を噛んでは飲み込まずに吐き出す行為(チューイング)だけを長期間続けている人などは、「特定不能の摂食障害」に分類されます。

原因

摂食障害の原因はいまだ不明ですが、社会・文化的要因、心理的要因、環境的要因などが複雑に作用し合って出現すると考えられています。

社会・文化的要因

社会・文化的要因として、近年の日本における「痩せていることが美しい」とする現代社会の影響がうかがわれます。つまり、スリムをもてはやす社会・文化の影響です。

日本人の20代女性の平均体重は毎年低くなり、標準体重の-10%の一歩手前まできています。マスコミや雑誌などでは、スリムなモデルの特集やダイエットの特集記事を毎日のように目にします。そのため、自分に自信がないのは体型のせいだと思い、過度なダイエットにのめり込んでしまうケースが増えてきています。

個々人の病因は異なっていても、全体として考えると、昨今の摂食障害の増加には、こうした社会的影響も否定できません。

心理的要因

周囲の評価を異常に気にしてしまう、嫌と言えない、自分に自信がないなど、自己のアイデンティティが定まっていない方は摂食障害になりやすい傾向にあります。自分という軸が定まっていないため、相手に合わせすぎてしまったり、嫌と言えず、またそんな自分に自信をなくしていくという悪循環に陥りやすいといえます。

また、仕事でのトラブルや人間関係のストレスから不安を感じたり自分を責めてしまったりした結果、むちゃ食いに走ってしまい、摂食障害となるケースもあります。

環境的要因

摂食障害の原因として、家庭環境も大きく影響します。一般的に言われているものは、愛情不足です。幼いころ、愛情をもっとも必要としていた時期に愛情を十分に受け取れないことで、それが本人の性格に影響を及ぼし、摂食障害を引き起こすことがあります。それはたとえ親元から独立してからでも、影響は残る場合があります。

もちろん、影響する要因は母親だけでなく、父親も同様です。育児不参加、亭主関白、家庭内暴力、両親の不仲など、要因は様々あります。

この記事の投稿者

宮崎 関大
宮崎 関大
STナビ管理人。言語聴覚士。