とろみの必要性について

口から食べる機能が障害されると、一般的に水分やお茶、味噌汁のようなものが上手に飲めなくなります。水のようにサラサラした粘度の低い液体は、動きが速く、口の中で広がりやすいため、誤って気管に入ってしまう場合があります。

そこで、水分を嚥下するときにはトロミをつけてある程度の粘度を持たせることで、動きのスピードがゆっくりになり、また、まとまりやすくなり、スムーズな飲み込みにつなげていきます。

ただし、トロミをつけすぎると、逆にべたついてしまい飲み込みづらくなり、誤嚥や窒息の原因となることがあります。その人にとっての最適なトロミの程度は異なりますので注意が必要です。

とろみの粘度

  • ポタージュ状
    →スプーンを傾けると、ポタポタと落ちる状態
  • ヨーグルト状
    →スプーンを傾けると、ツルリと流れ落ちる状態
  • マヨネーズ状
    →スプーンを傾けると、ツルリとまとまって落ちる状態

これまで、とろみの粘度は病院や施設により表現方法がまちまちでした。それを、“医療・福祉関係者が共通して使用できる統一基準”を作ることを目的に、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が2013年9月に嚥下調整食分類2013を発表しました。是非、ご参考にしてください。

日本摂食・嚥下リハビリテーション学会

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とろみをつけるのに用いる食材

  • デンプン(片栗粉・くず粉・コーンスターチなど)
    →植物性のデンプン。水で溶いた後に必ず煮立てる必要がある。時間の経過や温度変化により元の状態に戻ってしまう。
  • 増粘剤
    →市販で販売されている調整食品。でんぷん、加工でんぷん、デキストリン、ガム等の食物繊維などで出来ている。熱い物や冷たい物に関係なく、加えて混ぜるだけで簡単にとろみを付けることができる。

増粘剤の特徴

増粘剤とは、混ぜるだけでとろみを付けることのできる、でんぷんを主原料にした食品です。

食品の温度に関係なく使用でき、また、加熱の必要もなく、適量を混ぜるだけで簡単にとろみをつけることができます。

  • 加熱調理がいらない
  • 冷たい物にも温かい物にも溶ける
  • 粘度の調整が簡単
  • 短時間で増粘効果が得られる
  • 経時的変化が少ない

  • 量が多いと、口腔内や咽頭にべたつきやすい
  • 使う量によっては味を損なうものもある
  • 食感が好まれない場合がある
  • 食材との相性がある

増粘剤の進歩

現在の増粘剤は第3世代と呼ばれているもので、医療の進歩とともに増粘剤も創意工夫がなされてきました。世代が進むたびに飲み込みやすく、また使いやすく改良されてきています。

以下に各世代の特徴を紹介します。

第1世代 でんぷん(片栗粉・くず粉) 必要な粘度にするには量が必要。また、とろみがつくまで時間がかかり、唾液の影響を受けやすい。もったりとしたとろみがつくのが特徴。
第2世代 増粘多糖類(グアーガム系) 使用量は少ないが、とろみがつくまで時間がかかる。また、唾液の影響を受けやすく、とろみが白く濁ってしまう。
第3世代 増粘多糖類(キサンタンガム系) 使用量が少なく、とろみがつくのも早い。唾液の影響も受けにくい。
素材の味や匂い、色を損なわずにべたつきが少ないとろみがつくのが特徴で、現在の医療・介護の現場で最も使われている増粘剤です。

増粘剤選びのポイント!

ダマにならず、色が透明であること

ダマができてしまうと、口に含むたびに粘度に差が出てきてしまいます。粘度に差があると誤嚥につながるため、ダマになりにくいものを選び、ダマができてしまった場合は取り除くことを心掛けましょう。

また、増粘剤を溶かした時に白く濁ってしまうと、見た目も悪くなってしまいます。見た目は食べる意欲につながるので、透明性を保てるものを選びましょう。

味に変化が少なく、べたつき感がないこと

嚥下食でもおいしく食べられることが大切な前提です。増粘剤を使用すると味や香りの変化は多少ありますが、できるだけ影響が少ないものを選びましょう。

また、適度なとろみは良いですが、とろみが強いとべたつきが増して、咽頭に残留し、誤嚥につながることもあります。べたつき感が少ないものを選びましょう。

経時的変化が少ないこと

時間が経つにつれて、とろみが少なくなったり、逆にとろみが増してしまうようでは、水分を取り置き出来ずに大変不便です。とろみが安定してからは変化の少ないものを選びましょう。

とろみでも誤嚥する場合はゼリー

増粘剤は、分量を入れすぎると、硬さやべたつきが増して、口腔内や咽頭にくっついて残留することにより、誤嚥のリスクが増して、逆効果になります。通常の目安は1%前後です。0.5~1.5%位の範囲で、患者さんの状態に合わせて調整しましょう。

とろみをつけてもむせる、飲み込みが難しいという場合は、とろみの量を多くするのではなく、ゼリーにして提供します。ゼラチンや寒天等のゲル化剤と言われるものでお茶等を食べやすい硬さにかためて、ゼリーとして飲み込むことでのど越しもよく、安全においしく食べることができます。

固めるのに用いる食材

  • ゼラチン
    →動物の骨や皮のコラーゲンで体温で溶け、消化、吸収される。そのなめらかなゼリーは経口摂取開始時によく使われる。
  • 寒天
    →紅藻類、てんぐさ、おごのりなど植物由来の素材。腰を弱くしたもの等色々な種類がある。使う量や固める素材によっては、嚥下障害が重症でなければ良いようである。
  • ゼリー食用調整食品
    →デキストリン、増粘多糖類、寒天などが合わさって調整された食品。ゼラチンゼリーの物性と、温めても溶解せず、使用量が少なくてすむ寒天ゼリーの簡便性を兼ね備えている。使用されている成分により、唾液の影響が変わってくる。

ゼラチンと寒天の特徴

ゲル化剤として使用されることの多いゼラチンと寒天のそれぞれの特徴を紹介します。

  • 適度の軟らかさと弾性がある
  • 変形しやすい
  • 食隗が均一
  • 口腔内体温で溶解する
  • 食品の美味しさを損なわない
  • 滑らか
  • 事前に作っておく必要がある(24時間で安定)
  • 常温では凝固しない(10℃以下で凝固)
  • 温度管理が難しい(室温で溶解する)
  • 温度によって形状が変化する
  • 硬化後の濃度の変更が不可能
  • 室温で凝固する
  • 温度管理が容易
  • 温度による形状の変化が少ない
  • ゼラチンと比較した場合、短時間で凝固が可能
  • 食塊形成しにくい
  • 変形しない
  • ばらけやすい
  • 硬化後の濃度の変更が不可能

この記事の投稿者

宮崎 関大
宮崎 関大
STナビ管理人。言語聴覚士。