「LISTEN(リッスン)」ろう者の音楽を視覚的に表現した映画

「LISTEN(リッスン)」とは、「聾者(ろう者)の音楽」を視覚的に表現した無音のアート・ドキュメンタリー映画です。
耳の聞こえない聾者(ろう者)たちが楽器や音声を介さずに、自身の手、指、顔の表情から全身に至るまでその肉体を余すことなく駆使しながら視覚的に「音楽」空間を創り出しています。そのため、環境音・効果音一切を使用せず、なんと上映58分間全くの無音です。

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各々の音楽を手話で表現する

出演者は国内外で活躍する舞踏家から、演技経験のない一般の聾者まで多彩な顔ぶれが集まっています。出演者は各々に「音楽が視える」と語り、「魂から溢れ出る“気”のようなもの」から「音楽」を感じると言います。複数の手話詩を交えながら「四季」を表現する初老の男性、木々のざわめきの中で風を歌う少女、波打つ浜辺で魂を叫ぶ女性、親密な愛情を共鳴させる夫婦などなど。
手話言語を通じて日常的に熟達した彼らの身体表現は、「音楽とは?」という問いのさらに奥深く、人の内面から滲み出る内なる“何か”へと迫っていく様子を感じ取れます。

二人の聾アーティストの化学反応

映画監督の牧原依里氏と舞踏家の雫境(DAKEI)氏の二人の聾アーティストによる共同監督、撮影、制作された作品です。

これまであった聴覚障害者向けの音楽は、視覚や振動に工夫が施されたものでしたが、牧原依里氏はその音楽に心を動かされることはなく、むしろ、無音で鑑賞するミュージカル映画のダンス、オーケストラの指揮者や演奏者の表情、身体の動きなどから視覚的に「音楽」を感じ、魅せられてきたと語っています。 一方、雫境(DAKEI)氏は、舞踏との出会い、踊りを続けるうちにいつしか「手話は言語の領域を超え、それ自体が音楽を奏でられるのではないか」という想いが芽生えていったと語っています。
そんな二人の共振から「聾者の音楽」をテーマにした映画の探求が始まり、聾のアイデンティティーから「音楽」の新たな可能性が開けようとしています。

牧原依里 プロフィール
1986年生まれ。聾の両親を持つ。小学2年まで聾学校に通い、小学3年から普通学校に通う。大正大学で臨床心理学を専攻。会社に勤めながら映画制作を行っている。 2013年ニューシネマワークショップ受講。2014年Movie-High14『今、僕は死ぬことにした』(短編映画)上映。

雫境(DAKEI) プロフィール
2000年東京藝術大学大学院博士課程修了、美術博士号取得。大学院在籍中、舞踏家・鶴山欣也の誘いを受け、舞踏を始める。国内のみならずアメリカ、イギリス、スペイン、メキシコなど世界中を舞台に活動。また、アニエスベー初監督映画『わたしの名前は…』などの映像作品に出演、幅広く活動を行っている。

「LISTEN(リッスン)は5月14日より全国公開中です。

公式ホームページhttp://www.uplink.co.jp/listen/
公式facebookhttps://www.facebook.com/listen-567768356712092/
公式Twitterhttps://twitter.com/listen2016deaf1

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