聴覚障害者のコミュニケーション方法において代表的なものは4つあります。手話、筆談、読話、音声(補聴器・人工内耳)です。ここでは、それぞれのコミュニケーション方法について紹介していきます。
手話
手話とは、聴覚障害者の生活の中から生み出されてきた言語で、手や体の動きなどで単語を表現し、それをつなげていくことでコミュニケーションを取る方法です。同じ表現方法でも、表情や口形、位置や方向、強弱などで意味あいを持たせます。
手話には、日本手話と日本語対応手話があります。日本手話は、元々聾者同士のコミュニケーションの手段として使われていた手話であり、一般の日本語と比べて文法や構成が異なります。そのため、日本語と並行して使うことは難しく、日本語とは異なる言語といえます。これに対して、日本語対応手話は、日本語に合わせるために手話の単語を並べながら文章を作っていく手話であり、健聴者に受け入れやすい傾向があります。そのため、手話サークルなどでは、こちらの手話を勉強するところが増えてきています。
指文字
指文字は、日本語の50音をすべて指の動きで表現するコミュニケーション方法です。1音ずつ伝えていくため、伝える側も読み取る側も大変ですが、新しい単語や手話がわからないときなどに便利です。
筆談・空書き
筆談は、文字を習得している難聴者にとても有効なコミュニケーション方法です。書き手は文字を書く作業が多少大変ですが、確実に内容が伝わるため、難聴者にありがちな伝達ミスを防ぐことができます。しかし、細かいニュアンス等を伝えることは困難です。
空書きは、紙やペンがないときに用いるコミュニケーション方法で、空中に文字を書いたり、手のひらに文字を書いたりして、話を伝えます。
最近は、学校のボランティアとして講義内容をノートにおこしてくれるノートテイクや講演会等で講師の話をプロジェクターに映してくれる要約筆記等の支援があります。
読話
読話(どくわ)とは、口や舌、顎等の口周辺の動きから相手の話の内容を目で読み取るコミュニケーション方法です。相手にほとんど負担を与えず、自分の読み取り技術だけで会話を行うことができるので、話し相手に優しい技術と言えます。
しかし、日本語には同口形異音語が多くあり、実際に読話だけで会話の全てを読むことは困難です。なので、読話はあくまで補助的な技術になり、補聴器を着けての会話や手話を使っての会話の際に一緒に口元を見て、会話の手助けをするような方法として用います。
※ 同口形異音語とは、同じ口の形だが、発音は違う言葉のこと。例:「たまご」「たばこ」「なまこ」
読話と口話と読唇術
口を読み取る技術には、読話(どくわ)、口話(こうわ)、読唇術(どくしんじゅつ)と様々な呼び名があります。
これらはすべて口の動きを読み取る技術のことを指しており、内容的にさほど違いはありません。ですが、聴覚障害者のコミュニケーション技術として使用する場合は、口の動きだけでなく、表情や文脈の流れなど会話に必要な情報をすべて読み取る必要があるため、読話-speech reading-と呼ぶことがより専門的です。
音声(補聴器・人工内耳)
補聴器や人工内耳を使用することで、音声によりコミュニケーションをとる方法です。
トータルコミュニケーション
ここでは、代表的な4つのコミュニケーション方法を紹介しましたが、コミュニケーションとは1つの方法を選んで使用するものではありません。出会う人や使用する場面により様々なコミュニケーション方法が必要になってきます。そのため、1つだけを使用するのではなく、多くのコミュニケーション方法を同時に使用するトータルコミュニケーションが理想的と言えます。
トータルコミュニケーションを理解して様々な方法を利用することで、上手なコミュニケーションが実現できると思います。