嚥下障害にかかわる簡易検査(スクリーニング検査)

嚥下障害にかかわる簡易検査(スクリーニング検査)

嚥下障害を診断する検査には、嚥下障害の有無を簡便に評価するスクリーニングテストと嚥下障害の障害程度を評価する検査があります。
嚥下運動は外部から観察しにくく、身体所見のみで障害の程度を評価することは困難です。
スクリーニングテストは特別な機器を使用せず、ベッドサイドで行うことができるので嚥下障害の有無を評価する最初の検査としてはとても有用です。しかし、スクリーニングテストではムセのない誤嚥の検出に限界があり、本検査だけで嚥下障害なしとは判断できません。そのため、嚥下障害が疑われる場合には詳細な検査を行い、訓練を進めていく必要があります。

反復唾液嚥下テスト(Repetitive saliva swallow test : RSST)

嚥下障害の随意的惹起能力を評価するスクリーニング検査です。ベッドサイドで簡便に嚥下障害の評価を行えます。
口唇・口腔内を少量の冷水につけた綿棒等で湿した後、30秒間にできるだけ頻回に唾液を嚥下するよう指示します。
30秒間の嚥下回数が3回以下の場合は、何らかの嚥下障害があると考えられます。

水飲み検査

常温の水30mlを飲んでもらい、嚥下に要する時間・回数を測定し、併せてムセなどの嚥下時のエピソード(※)も記録します。嚥下に要する時間は健常者では5秒以内であり、時間が長い場合や嚥下回数が多い場合は口腔期や咽頭期の障害が疑われます。
検出力が高い検査ですが、ムセる患者さんに必ず嚥下障害があるとはいえない症例もあり、ムセのない誤嚥(不顕性誤嚥)を見逃すこともあります。また、検査時に頸部聴診法を併用することで、嚥下時のエピソードをより詳細に判定することができ、検出の精度が高まります。
なお、重度の嚥下障害の患者さんでは、水の量が多く誤嚥の危険性が高いため、本検査は適しません。

※エピソードとは
すするような飲み方、含むような飲み方、口唇からの水の流出、むせながらも無理に動作を続けようとする傾向、注意深い飲み方など

  1. 1回でむせることなく飲むことができる
  2. 2回以上に分けるが、むせることなく飲むことができる
  3. 1回で飲むことができるが、むせることがある
  4. 2回以上に分けて飲むにもかかわらず、むせることがある
  5. むせることがしばしばで、全量飲むことが困難である

判定基準

1.にて、5秒以内は正常範囲、5秒以上は疑いあり
2.は疑いあり
3~5は異常

改訂水飲み検査(Modified Water Swallowing Test:MWST)

スクリーニングテストの1つで、上記の水飲み検査を行うことにリスクの高い重度嚥下障害の方に実施します。冷水3mlの嚥下を行ってもらい、嚥下反射誘発の有無、ムセ、呼吸の変化を評価します。頸部聴診法を併用することで、より正確に評価を行うことができます。

評価

  1. 嚥下なし、ムセまたは呼吸変化を伴う
  2. 嚥下あり、呼吸変化を伴う
  3. 嚥下あり、呼吸変化はないが、ムセまたは湿性嗄声を伴う
  4. 嚥下あり、呼吸変化なし、ムセ、湿性嗄声なし
  5. 4 に加え、追加嚥下運動(空嚥下)が 30 秒以内に2 回以上可能

判定不能:口から出す、無反応

判定基準

5 が正常、1~4は嚥下障害の疑いあり

フードテスト(Food Test:FT)

ティースプーン1杯(3~4g)のプリンなどを嚥下させてその状態を観察します。嚥下が可能な場合には、更に2回の嚥下運動を追加して評価します。評点が4点以上の場合は、最大3回まで施行し、最も悪い評点を記載します。
テストを行うに当たっては、全身状態・意識・呼吸が安定しており、少なくとも摂食類似刺激・口腔咽頭冷却刺激による嚥下惹起が確実な状態で医師の了解のもと試行します。

評価

  1. 嚥下なし、ムセまたは呼吸変化を伴う
  2. 嚥下あり、呼吸変化を伴う
  3. 嚥下あり、呼吸変化はないが、ムセあるいは湿性嗄声や口腔内残留を伴う
  4. 嚥下あり、呼吸変化なし、ムセ、湿性嗄声なし、追加嚥下で口腔内残留は消失
  5. 4点に加え、追加嚥下運動(空嚥下)が30秒以内に2回以上可能

判定不能:口から出す、無反応

頸部聴診法

頸部聴診法は、食塊を嚥下する際に咽頭部で生じる嚥下音や嚥下前後の呼吸音を頸部より聴診し、嚥下音の性状や長さ及び呼吸音の性状や発生するタイミングを聴取して、主に咽頭期の嚥下障害を判定する方法です。
ベッドサイドでも極めて簡便に行えるスクリーニング検査で、食塊の喉頭侵入や誤嚥、下咽頭の貯留を判定するのに実施されています。

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