喉頭麻痺

リハビリ・医療

喉頭の動きに関係する神経に何らかの原因が生じて、声帯やその他の喉頭の筋肉の動きが障害された状態を喉頭麻痺といいます。

原因

喉頭の動きにかかわる神経は脳から喉頭の筋肉に達するまでにきわめて長い道のりをたどります。そのため、脳から喉頭まで、どの箇所で神経が傷ついても喉頭麻痺となるため、原因は非常に多岐にわたります。

つまり喉頭麻痺はただ一つの病名ではなく、原因疾患により現れる症状のひとつということになります。

症状

喉頭は発声、呼吸、嚥下など多くの機能にかかわる器官です。そのため、声が出にくいというような音声障害、うまく飲み込めないという嚥下障害、呼吸ができなくなる呼吸困難と多くの症状が現れます。

音声障害

声帯は左右1対の粘膜のヒダとして存在し、呼吸時には開き、発声時には閉まり、開閉を繰り返します。この左右の声帯で作られる隙間のことを声門と呼びます。発声時に、閉じた声門に肺からの空気が送られることで声帯が振動し、声の元が作られます。しかし、左右どちらかの声帯の動きが麻痺をおこすと、声門が十分に閉鎖せず(声門閉鎖不全)、隙間ができてしまい、嗄声(声のかすれ)で力の抜けたような弱々しい声になってしまいます。

声帯の両側が麻痺を起こすと、多くの場合は声門が閉じられた位置で声帯が動かなくなります。この場合は、声門が閉鎖してしまっているため、呼吸の妨げになり呼吸困難を生じてしまいます。

嚥下障害

喉頭のいずれかに麻痺があるために、食物をうまく食道に送り込めず、食物や唾液などが気管に入ってしまう誤嚥が生じてきます。
また誤嚥により食物や唾液が肺に達してしまい、肺炎を起こし生命を脅かすこともあります。

治療

喉頭麻痺に対する治療方針は原因となっている疾患に対する治療が最優先されます。その上で麻痺が長期にのこる場合には症状に応じて適切な治療をおこないます。誤嚥のひどい喉頭麻痺の場合は、声を出すことと口から食事をすることのどちらかを犠牲にせざるを得ないこともあり、治療方針の決定には患者さん、ご家族と十分な相談が欠かせません。

麻痺が一側の場合は嗄声の改善を目的として、麻痺した声帯を真ん中に移動させるための手術がおこなわれます。これには声帯の粘膜下にコラーゲンや筋膜、脂肪などを注入する声帯内注入術、声帯の外側から軟骨やシリコンブロック、ゴアテックスなどを用いて声帯を真ん中に押し出す甲状軟骨形成術、声帯に付着している軟骨を引っ張ることで声帯を真ん中に移動させる披裂軟骨内転術などがあります。

両側の麻痺の場合は呼吸困難が主な症状になるために、声門を拡げることが手術の目的となります。声帯を外側に引っ張る声帯外方移動術、声帯の一部を切除するレーザー手術、麻痺している喉頭よりも下方で気管に穴をあける気管切開などがあります。

嚥下障害に対する手術治療は喉頭の音声機能を保存する治療と、音声機能を犠牲にして口から食べることを可能にする手術とに大別されます。前者としては喉頭挙上術、輪状咽頭筋切断術が主なもので、後者としては喉頭閉鎖術、喉頭気管分離術、喉頭摘出術などがあります。

治療は手術だけでなく、リハビリテーションも重要になります。音声障害への音声訓練、嚥下障害への嚥下訓練を行っていきます。

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