概要

成人になった6人のADHD当事者が自分の体験や想いをつづり、それぞれにNPO法人「えじそんくらぶ」代表の高山恵子さんが解説を加えながら進みます。大学生活、就職、働く、結婚、家庭など、人生を生きていくうえで出会うさまざまな課題をどう乗り越えていくか、そのヒントになることを願って書かれた一冊です。

adhd-survival

本書に手記を書いている6人の方々は、皆「大人になってから診断名がついた」方々です。そのため、周囲とは違う行動をとってしまう自分に対して「生き辛さ」を感じていたと綴っています。
ですが、ライフステージのどこかで「自分らしさとはなにか」に出会っています。ADHDの診断、「ナチュラルサポート」との出会い、そして、いままでの失敗から奮起して、特性を考慮した生活環境に切り替えて前向きに生きるようになったストーリーが描かれています。

本書を読んで印象的だった箇所は、医師から診断を受けた際にマイナスの感情だけでなく、プラスの感情も起きたという一文です。

引用

ひとつはマイナスの感情です。やっぱり障害を持っていたんだということ。がんばっても無理なもんは無理なのかというあきらめみたいな気持ちです。当然だと思います。
しかし、驚いたのは、同時にプラスの感情も起こったことです。ほっとした感情です。その時までずっと、できないことを、しつけの問題や、努力不足、責任感の弱さとして自分を責めてきました。
~中略~
しかし、それは仕方ないことだったんだと思えるようになりました。言い換えると、今までは、心がわるくて体が動かないと思っていたのが、心がわるいのではなく、そもそも体がわるかったんだということに気がついたのです。
このことは予想以上に、僕にとっては救いと自信になりました。

この方は、診断名がついたことから自分に自信をもてるようになり、「自分を扱いこなす」という考えに変わり、仲間と企業をしたり、同じような立場の人の就労支援にかかわったりしていると綴っています。

高山さんの解説でも、ADHDの特性である「不注意」「多動」「衝動性」は「好奇心旺盛」「エネルギッシュ」「すぐ実行」とプラスに働く可能性があると紹介しています。特性をしっかり理解し、その特性を長所と捉えられる環境があれば、力を発揮でき、それは思いもよらないアイディアを秘めているかもしれないと感じました。

ためになるアドバイス

当事者の手記のなかにも高山さんの解説のなかにもためになるアドバイスが豊富に詰め込まれています。
下に一例を載せておきます。

セルフエスティームの高め方
ADHDのこどもは「できることとできないこと」の差が激しく、他の子との違いが気になる。ADHDがあっても「元気のいい子」という見方で愛情深く育てられたり、保護者以外から褒められたり感謝されたりすることは、セルフエスティーム(自尊感情)の高まりに重要。

学習スタイルチェック
視覚型、聴覚型、体得型の3つから自分の得意なスタイルを見つける。

片づけ習慣をつける
文房具箱、貴重品箱、カテゴライズ不可能箱・・・のようにいつも片付ける場所を作る。2年以上使わなかったものは思い切って捨てる。

GTD(Getting Things Done)
TODOややりたいことなど優先順や目的を整理するのではなく、頭の中にあるものを区別なくとにかく紙に書き出す方法。散漫さから「何か忘れているのでは?」というモヤモヤが頭にある場合は効果的。

などなど。
他にも、ライフステージに沿った特徴と支援、大学での勉強の仕方、生活環境改善、仕事での問題解決能力など、本当に多くのアドバイスがしかも具体的に書かれており、すぐにでも実践できます。

本文中にでてくる書籍やサイト

本文中には多くの書籍やサイトが紹介されています。もし、興味がありましたら、あわせてご覧ください。

ADHDサクセスストーリー―明るく生きるヒント集
高山さんが学生時代に出会った本

フロンティア★ADHD
当事者の一人、あーささんが運営するADHDをマンガで解説しているサイト

NPO法人 えじそんくらぶ
ADHDを豊かな個性のひとつとして長所を伸ばし、弱点を克服できるよう支援する団体。高山さんが代表を務める。

まとめ

「発達障害とは何か?」「どういう特徴が見られるか?」という専門家が書いた本は世の中にたくさんありますが、本書のように当事者視点で必要なアドバイスが書かれている本はとても貴重です。ご本人、ご家族、支援者などADHDに係わる皆様にお勧めしたい一冊です。

最後に、本文に書かれている素晴らしい一節で締めさせていただきます。

「There is something only you can do.」
(あなただけにできる何かがある)

ADHDのサバイバルストーリー [ 高山恵子 ]
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