精神保健福祉士は、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)という名称で1950年代より精神科医療機関を中心に医療チームの一員として導入された歴史のある専門職です。1997年の「精神保健福祉士法」施行に伴って立場を確立し、医療・保健・福祉と活躍の場は多岐に渡ります。精神科領域にかかせない精神保健福祉士のなり方や職場について説明していきます。
精神保健福祉士ってどんな仕事?
精神保健福祉士とは、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)とも呼ばれる精神科領域の専門職です。精神的な病を抱えた人がスムーズに生活を営めるように、相談や援助などを行います。また、家族や関係機関との連絡・調整を行って、社会参加ができるよう目指します。病院以外では、地域生活を支援する目的で相談支援や生活訓練、就労支援などを行ったり、精神保健福祉センターや保健所などで市民のメンタルヘルス啓発活動に携わったりします。
精神保健福祉士になるには?
精神保健福祉士は国の定める国家試験です。免許を得るためには、まずは受験資格を取得し、そのうえで国家試験に合格する必要があります。
精神保健福祉士の受験資格取得には、11通りの方法があります。最短ルートは、保健福祉系の4年生大学。指定科目を履修すれば実務経験不要で試験を受けることができます。ルートの詳細については、厚生労働省のホームページに記載されています。
「相談援助実務」とは、「精神障害者の社会復帰に関する相談援助を主たる業務として行っている方」との定義があり、社会福祉・試験振興センターに詳しく掲載されています。
また、短期養成講座・一般養成講座とは、主に専門学校で開講されている養成講座です。通学講座だけではなく、通信で受けられる講座もありますので、仕事を続けながらでも受講することが可能です。なお、この講座は教育訓練給付金制度の対象講座となっています。
精神保健福祉士国家試験は、年1回行われます。試験の形式は、筆記試験です。
筆記試験科目は、次の17科目です。なお、1~11までの11科目については、社会福祉士との共通科目となっています。国家試験の合格率は6割程度で、社会福祉士をすでに取得している場合は、共通する科目が多くありますので、勉強を有利に進めることができます。
- 人体の構造と機能及び疾病
- 心理学理論と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 社会保障
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 福祉行財政と福祉計画
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 精神疾患とその治療
- 精神保健の課題と支援
- 精神保健福祉・相談援助の基盤
- 精神保健福祉の理論と相談援助の展開
- 精神保健福祉に関する制度とサービス
- 精神障害者の生活支援システム
主な就職先
精神保健福祉士は、精神障害のある人やその家族、メンタルヘルスの課題をかかえる人などを対象に相談や援助を行います。したがって、主な就職先は、精神病院や総合病院の精神科、老人病院などの医療現場となります。また、近年は医療現場に限らずメンタルヘルスの問題を重視する傾向にあり、企業や教育現場、自治体でも精神保健福祉士による相談会を設ける事も増え、その活躍の場は年々広がっています。
医療機関(精神科病院・診療所、総合病院精神科)
生活支援サービス(相談支援事業、地域活動支援センター、グループホーム・ケアホーム、就労移行支援事業、就労継続支援事業、自立訓練事業、救護施設、児童養護施設等)
行政機関(自治体・保健所、福祉事務所、精神保健福祉センター)
司法施設(保護観察所等、矯正施設)
その他(社会福祉協議会、ハローワーク、介護保険関連施設、教育機関、企業)など
まとめ
精神保健福祉士は、精神的に様々な問題を抱えている人が支援対象者となります。したがって、相談を受ける際に、相手に巻き込まれず、客観的な視点で接することができる冷静さが必要になります。一定の距離感を保ちながらも、相手の気持ちや価値観を尊重する思いやりを忘れないことがこの職種には必要と思います。
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