失語症者の職場復帰に向けて

失語症

職場の理解と協力

失語症のある方が職場復帰するには、職場の理解と協力が欠かせません。職場復帰に向けて3つの視点からみてみようと思います。

症状の正しい理解

失語症は知的能力や物事を考える力の低下ではなく、自分の言いたい事をうまく伝えたり、相手の言うことを正確に理解する事が難しくなる障害です。したがって、本人の症状の特徴に合わせて周囲の方がコミュニケーション方法を工夫していくことが大切になります。症状の特徴については、主治医や担当の言語聴覚士に尋ねてみましょう。

仕事の適性

失語症といっても、症状の程度や特性は様々あります。(※ 症状や特性については、言語症状の項目や失語症のタイプ別の項目をご覧ください)仕事の適性を考えるには、症状にどのような特徴があるのか、得意なことや不得意なことは何か等、本人の個性を併せてながらその能力に見合った職業を探す必要があります。

こうした就労支援を専門に行う機関として、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、障害者職業総合センターがあります。是非相談してみましょう。

職場環境

実際に職場復帰や就労してからご本人とコミュニケーションをとり、共に仕事をしていくのは職場の同僚の人達です。失語症のある方が継続的に仕事をしていくうえでは、職場の人達の理解や協力が欠かせません。そのためには医療機関や就労支援機関の専門家と話し合って、失語症についての理解を深めたり、ご本人の能力にあった仕事内容を考えたりと、失語症のある方が働ける職場環境を作り上げていきましょう。

社内での障害についての啓発や仕事の進め方についての相談などに、職場適応援助者(ジョブコーチ)支援が役立ちます。

※ジョブコーチ支援制度とは・・・
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援においては、障害者、事業主及び当該障害者の家族に対して障害者の職場適応に関するきめ細かな支援を実施することにより、障害者の職場適応を図り、持って障害者の雇用の促進及び職業の安定に資することを目的とする制度です。
詳しくはジョブコーチ支援制度(厚生労働省)をご参照ください。

職場での支援のポイント

失語症のある方との会話に際しては、

  • 表情がわかるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短いことばや文章で、わかりやすく話しかける。
  • 一度でうまく伝わらないときは、繰り返して言ったり、別のことばに言い換えたり、漢字や絵で書いたり、写真・実物・ジェスチャーで示す。
  • 「はい」「いいえ」で答えられるよう問いかける。
  • 話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いる。

などに気をつけながら会話をするととても理解しやすいです。

失語症の各症状への対応例

聞く

hatena
口頭での指示や注意がわからない。
yajirushi bikkuri
指示は図や手振りで伝える。
作業を固定する。

話す

hatena
連絡事項を伝えられない。
うまく質問できない。
yajirushi bikkuri
連絡カードを作る。
質問カードを使う。

読む

hatena
警告・危険の連絡がわからない。
指示書やマニュアルが理解できない。
yajirushi bikkuri
危険な作業から遠ざける。
図を使った説明書を作る。

書く

hatena
メモで伝達できない。
yajirushi bikkuri
こまめに声かけを行う。

合併する症状への対応例

記憶障害

hatena
新しい作業の手順などを覚えることが難しい。
予定を覚えておくことができない。
yajirushi bikkuri
予定や作業の手順などを忘れないよう、メモの利用を習慣づける。
メモの使い方も工夫する。

半側空間無視

hatena
見落としが多い。
片側の物事に気づかない。
yajirushi bikkuri
見落としはたいてい片側に限られているので、見落とさない側にメモや指示書を置く。

遂行機能障害

hatena
作業を手順通りに行えない。
yajirushi bikkuri
初めて見てもわかりやすい手順書を作る。
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