全世界で1000人の赤ちゃんのうち、1~2人の赤ちゃんが両耳に難聴を持って生れてきます。赤ちゃんの難聴は、ことばの発達やコミュニケーションなどに大きな影響を与える場合があります。そのため、近年、産科では生まれてすぐの赤ちゃんにもできる簡便な聴覚検査を行います。それが新生児聴覚スクリーニングです。
新生児聴覚スクリーニングは、生まれつきの難聴を早期に発見して、できるだけ早い時期から専門的な支援を開始するために行われます。
検査の方法
新生児聴覚スクリーニングで用いる検査は2種類あります。どちらも簡便で赤ちゃんが眠っている間に行います。
自動聴性脳幹反応検査(AABR)
音に対する反応を脳波で検出する方法で、検査機器自体に自動判定機能が備わっています。35dBというささやき声くらいの大きさの音に対する反応を見ており、軽度の難聴から発見することが可能です。
耳音響放射(OAE)
内耳の機能を測定して自動判定する方法です。刺激音を聞かせることによりおこる内耳が発生する微弱な反応を測定します。この反応が得られた場合、約40dB以上の聴力があると言われています。
新生児聴覚スクリーニングの流れ
- 一次検査
生後2~4日に各産科で行います。
「パス(pass)」、「要検査(refer)」の結果が表示され、要検査(refer)の場合、二次検査を行います。 - 二次検査
およそ生後1カ月頃に地域の総合病院等で行います。
「パス(pass)」、「要検査(refer)」の結果が表示され、要検査(refer)の場合、精密検査を行います。 - 精密検査
およそ生後2~4ヶ月頃に専門病院で行います。
精密検査では、確定診断まで行います。1度の検査で確定できない場合もあり、2~3ヵ月の間をおいて同じ検査を行います。
※スクリーニング検査は、ご両親の自由意思に基づき行われます。使用する検査の種類や回数は病院及びお住まいの自治体により異なります。
要検査(refer)の結果について
「要検査(refer)」とは、より詳しい検査が必要という意味です。スクリーニングにより要検査(refer)という結果が出たとしても、難聴が確定されたことではありません。様々な理由により、難聴以外でも要検査(refer)が表示されることがあります。そのため、要検査(refer)の結果が出た場合は、詳しい検査が必要ですので、医師の指示に従って精密検査を受けてください。
パス(pass)の場合、検査時点では難聴がありませんが、今後もずっと健聴ということを保証するものではありません。進行性難聴や後天性の難聴を発症する場合があります。特に幼児期では、中耳炎による聞こえの問題が多く起こります。保健所や病院で行われる乳幼児健診、1歳半、3歳児健診の受診をお勧めします。
スクリーニング検査の意義
乳幼児の検査に当たっては、本人から聞こえているかどうか確認することや応答を得ることができません。そのため、機器により自動判定で「パス(pass)」「要検査(refer)」の判断を行います。新生児聴覚スクリーニングは、精密検査が必要な患児を選ぶためのものであり、仮に検査の結果が悪くても、この時点で難聴であると診断されるわけではありません。生まれてしばらくは耳の穴や鼓膜の奥に羊水がたまっていると検査の結果がたまたま悪くでることもありますし、神経の発達には個人差もあります。そのような理由から正常な聴力でも「再検査(refer)」の結果が表示されることがあります。「要検査(refer)」とは、反応が不明確なため精密検査が必要ということです。
精密検査で難聴の診断が出たら
難聴のある赤ちゃんは、ことばの発達やコミュニケーション面の理解について、早期から適切な療育・教育が大事になります。精密検査を受けた病院から、必ず専門機関の紹介を受けてください。
また、療育相談や教育相談は、地域の保健所(保健センター)やろう学校でも行っています。難聴児を持つ母親教室を行っている市町村もあります。