知的障害とは
知能を中心とした精神発達が幼少時期から遅れていて、社会的な適応が困難な状態を示すものの総称です。
アメリカ精神遅滞協会で用いられている精神遅滞(mental retardation)とほぼ同義語として捉えられており、日本では以前は精神薄弱という名称で呼ばれていました。
定義
日本では法律上明確な定義はありませんが、以下のように考えられています。
- 知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの。
- 知的機能の水準:標準化された知能検査を用いて、おおむね知能指数(IQ)70以下。
重症度
ボーダー(境界域)
知能指数(IQ)は70~85程度。知的障害者とは認定されない。
軽度
知能指数(IQ)は50~69程度。理論上は知的障害者の約8割がこのカテゴリーに分類されるが、本人・周囲とも障害にはっきりと気付かずに社会生活を営んでいて、障害の自認がない場合も多いため、認定数はこれより少なくなる。生理的要因による障害が多く、若年期の頃では健康状態は良好。
中等度(中度)
知能指数(IQ)は35~49程度。合併症が多数と見られる。過半数の精神年齢は小学生低学年程度。
重度
知能指数(IQ)は20~34程度。大部分に合併症が見られる。多動や嗜好の偏りなどの行為が、問題になっている。概ね精神年齢は4歳児程度しかない。
最重度
知能指数(IQ)は19以下程度。大部分に合併症が見られる。寝たきりの場合も多い。しかし運動機能に問題がない場合、多動や嗜好の偏りなどの行為が問題になる場合がある。実際の精神年齢は1歳児程度。
原因
知的障害の原因は、染色体異常や先天性の代謝異常、周産期の障害などさまざまありますが、全体の30~40%は原因があきらかではありません。
また、原因によりその後の発達は多様を示します。
- 遺伝的要因(約5%)
先天性代謝障害、単一遺伝子障害(結節性硬化症など)、染色体異常症(転座型ダウン症など) - 胎生初期(約30%)
染色体異常(21トリソミー型ダウン症など)、毒素による障害(母親のアルコール常用など) - 妊娠・周産期異常(約10%)
栄養障害、未熟児、低酸素症、出産障害、その他 - 乳幼児期の障害(約5%)
感染症、外傷、鉛中毒、その他 - 環境・精神障害(15~20%)
愛情はく奪、社会的遮断、早期統合失調症、その他
言語の特徴
ことばの数や意味、統語についての理解と表出の全般的な発達が遅れます。また構音(発音)に問題をもつ場合も多いです。ですが、ことばの数や統語の発達に比べ、コミュニケーション行動の発達は良好の場合が多いです。
公的支援
知的障害には、公的支援として療育手帳が交付されます(都道府県により、愛の手帳や緑の手帳とよぶ場合もあります)。手帳交付の手続きや審査基準は各都道府県により異なりますので、詳しくはお住まいの市町村役所にお問い合わせください。