一般的に「聴力検査」といえば、オージオメータという検査機器を用いて行う純音聴力検査のことを指します。この純音聴力検査とは、防音室でヘッドホンを着けて行い、片耳ずつ、その人が聴こえる一番小さい音音圧(デシベル:dB)を周波数(ヘルツ:Hz)ごとに調べます。また、調べた検査結果は、オージオグラムという検査用紙に記入していきます。
オージオグラムの見方
オージオグラムは、縦軸に音圧(聴力レベルdB)、横軸に音の高さ(周波数レベルHz)が示された検査用紙です。
縦軸の音圧は、数字が大きくなるほど大きい音となり、横軸の周波数は、数字が大きくなるほど高い音となります。
検査結果は、右耳と左耳それぞれ区別して記入します。
気導聴力では、右耳を○印、左耳を×印で記載し、直線で結びます。
骨導聴力では、右耳は [ 、左耳は ] で記載します。これは直線で結びません。
また、オージオメータの最大音でも聞こえない状態をスケールアウトといい、記号の横に ↓ を記載します。
図のオージオグラムの検査値は以下のようになります。
\Hz dB\ |
125 | 250 | 500 | 1k | 2k | 4k | 8k |
---|---|---|---|---|---|---|---|
気導:右 | 30 | 30 | 40 | 45 | 50 | 50 | 55 |
気導:左 | 50 | 55 | 65 | 80 | 90 | 100 | ス |
骨導:右 | / | 30 | 40 | 45 | 50 | 50 | / |
骨導:左 | / | 45 | 55 | 60 | ス | ス | / |
各周波数毎に検査値が出たら、それらの値から平均聴力レベルを算出します。
平均聴力レベルは、会話に最も重要とされる500Hz、1000Hz、2000Hzの周波数帯域の値を使って、4分法という計算式で算出します。
平均聴力レベル(4分法)={500Hz+(1000Hz×2)+2000Hz}÷4
図の検査結果から平均聴力レベルを算出すると、右45dB、左78.8dBとなります。
※ 計算方法は、一般的には4分法を使用しますが、制度によって異なる計算式を使用する場合もあります。
- 身体障害者手帳・・・4分法
- 労働者災害補償保険法・・・6分法
- 騒音障害防止のためのガイドライン・・・3分法
気導聴力と骨導聴力について
気導聴力の伝導路
通常、音を聞くという場合、空気の振動が耳に入り、外耳→中耳→内耳の順に進んでいき、脳で感知されます。この耳からの聴こえのことを「気導聴力」と言います。
骨導聴力の伝導路
音を聞く方法は、空気の振動だけでなく、頭の骨に直接振動を与えて音を聞く方法もあります。額や耳の後ろの骨に振動受話器を当てることにより、外耳・中耳をかえさずに直接内耳に音を届けます。この骨から伝わる振動による聴こえのことを「骨導聴力」と言います。
※ ひと昔前に、骨で聞く携帯電話が流行りましたが、それはこの骨導を利用して内耳で直接音を聞く方法を使用しています。
気導聴力と骨導聴力の検査の役割
気導聴力と骨導聴力の2つの経路の聴力検査をする理由は、それぞれの検査をすることにより、おおまかな障害部位の診断ができるからです。
- 気導聴力が悪く、骨導聴力が正常な場合は、音を伝える器官に異常がある。
→つまり伝音性難聴だとわかる。 - 気導聴力と骨導聴力の両方が悪い場合は、音を感じる器官に異常がある。
→つまり感音性難聴だとわかる。 - 気導聴力と骨導聴力の両方が悪いが、それぞれの聴力に差がある場合は、音を伝える器官に異常があり、また、音を感じる器官にも異常がある。
→つまり混合性難聴だとわかる。
このように、気導聴力と骨導聴力の両方を検査することで、難聴のタイプの判別ができ、おおまかな障害部位がみえてくるため、症状診断の有力な手掛かりになります。