摂食・嚥下障害の原因

摂食・嚥下障害の原因

嚥下障害の原因は、器質的(解剖学的)原因、機能的(生理学的)原因、心理的原因、加齢にともなう機能低下の4つに分けられます。

器質的(解剖学的)原因

器質的障害とは、口腔、咽頭、食道などの解剖学的構造に異常がある場合で、食塊の通り道に障害物があるような状態をいいます。

舌癌や咽頭癌などの口腔・咽頭の腫瘍による場合や術後の障害が原因となる場合が多く、例えば、舌癌では舌切除による舌の運動障害を生じ、食塊を口腔内で処理できなくなり、咽頭へ送り込めないなど口腔期の障害が起こります。
一方、咽頭癌では舌根部や咽頭後壁切除により咽頭内圧(咽頭内に送り込まれた食塊を一気に食道へと押し込む圧)の低下を生じて、嚥下しても食塊が咽頭に残留してしまうなど咽頭期の障害が起こります。いずれも切除範囲が広いほど障害が重度になる傾向があります。

他にも、口蓋裂や先天性食道閉鎖などの先天性異常、嚥下器官の外傷や炎症、感染症などでも嚥下障害が生じます。

機能的(生理学的)原因

機能的障害とは、口腔や咽頭の構造は正常でもそれら諸器管の運動に問題があり、食塊の通り道の動きがゆっくりになってしまうような状態です。

原因としては、脳血管障害や筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病などの神経変性疾患のほか、多発性硬化症、脳炎、脳腫瘍、脳性まひ、外傷性脳損傷、筋ジストロフィー、重症筋無力症、多発性筋炎などが挙げられます。

心理的原因

神経性食欲不振症(拒食症)や神経性過食症(過食症)といった食行動の異常や認知症、うつ病などで食欲制御が傷害されている場合が含まれます。

神経性食欲不振症では、体重に対する過度のこだわりや自己評価への体重・体形の過剰な影響が存在し、食事を徹底的に制限したり、あるいはむちゃ食いと排出を繰り返しながら低体重を維持したりといった行動がみられ、特に思春期・青年期の女性に発症しやすい傾向があります。

うつ病や認知症では食欲制御が障害され、いくらでも食事を取ることがみられます。しかし、認知症ではしばしば食事をしたこと自体を忘れますが、食事をしたことを忘れても食欲制御が傷害されていなければ異常な量の摂食は困難です。

加齢の影響

高齢者においては、加齢にともない摂食・嚥下面の様々な機能低下を生じてきます。

例えば、歯の数が減少すると食塊形成には不利となります。嚥下反射(飲み込みの反射)はゆっくり始まるようになります。咳の反射が低下して、あまりむせにくくなります。小さな脳梗塞は加齢とともに増加し、嚥下機能に影響を及ぼします。
また、薬剤の影響としては、抗コリン薬や抗ヒスタミン薬の服用により、唾液分泌は抑制されます。抗てんかん薬や抗精神薬は嚥下反射を抑制します。

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