国家試験対策として摂食・嚥下障害のポイントをまとめました。参考になれば幸いです。
摂食・嚥下過程
摂食・嚥下過程は5期に分けられる。
期 | 各期の機能 | 関連器官等 |
---|---|---|
1.先行期 | 食物の認知、一口量・摂食速度の制御 | 視覚、嗅覚、触覚、大脳、上肢、体幹 |
2.準備期 | 口腔への取り込み、保持、咀嚼、食塊形成 | 口唇、歯、下顎、奥舌、口蓋、頬 |
3.口腔期 (嚥下第1期) |
咽頭への食塊移送 | 口唇、下顎、舌、硬口蓋、軟口蓋 |
4.咽頭期 (嚥下第2期) |
嚥下(食道への食塊移送)。嚥下反射は約1秒 | 軟口蓋、舌根、咽頭、喉頭蓋、喉頭、輪状咽頭筋 |
5.食道期 (嚥下第3期) |
胃への食塊移送。食道の蠕動運動 | 食道 |
嚥下に関係する筋肉
表情筋 | 口輪筋(口唇閉鎖)、口角筋(口角の挙上・下制)、口唇筋(口唇の挙上・下制)、大頬骨筋(上口唇を上後方へ)、オトガイ筋(下唇の突出)、頬筋(頬の緊張・口角を側方へ)、笑筋(口角を横へ)など |
咀嚼筋 | 側頭筋(閉口)、咬筋(閉口)、内側翼突筋(閉口)、外側翼突筋(開口) |
内舌筋 | 下縦舌筋(舌を短く・舌尖を下げる)、上縦舌筋(舌尖を上げる)、横舌筋(舌を長く・狭くする)、垂直舌筋(舌を平らにする) |
外舌筋 | 茎突舌筋(舌の後方部の挙上)、舌骨舌筋(舌を下方・後方へ)、オトガイ舌筋(舌の形状変化)、口蓋舌筋(軟口蓋の下制・舌根部の挙上) |
軟口蓋の筋 | 口蓋帆挙筋(軟口蓋の挙上)、口蓋帆張筋(軟口蓋の緊張・耳管孔の開口)、口蓋舌筋(軟口蓋の下制・舌根部の挙上)、口蓋垂筋(口蓋垂の挙上・緊張・短縮)、口蓋咽頭筋(口蓋帆の下制) |
唾液
三大唾液腺(耳下腺、顎下腺、耳下腺)及び小唾液腺から分泌される体液のこと。唾液により、口の持つ本来の働きが十分に機能することができる。
大唾液腺 :耳下腺、顎下腺、舌下腺
小唾液腺 :口唇腺、頬腺、口蓋腺 、臼歯腺、舌腺
分泌量:安静時約0.1ml/分、分泌が盛んな時(食事時等)約4ml分、1日で1~1.5リットル。
唾液腺 | 割合 | 性質 | 神経 |
---|---|---|---|
耳下腺 | 70% | 漿液性 | 舌咽神経 |
顎下腺 | 25% | 混合性 | 顔面神経 |
舌下腺 | 5% | 粘液性 | 顔面神経 |
嚥下障害の原因疾患
器質的原因
- 舌炎
- 口内炎
- 歯槽膿漏
- 扁桃炎
- 扁桃周囲膿瘍
- 咽頭炎
- 喉頭炎
- 口腔癌
- 舌癌
- 上顎癌
- 咽頭癌
- 腫瘍による圧迫
- 頚椎症
- 食道炎
- 食道の狭窄・腫瘍
- 食道裂孔ヘルニア等
機能的原因
- 脳血管障害
- 頭部外傷
- 脳腫瘍
- 脳膿瘍
- 脳炎
- 髄膜炎
- 錐体外路疾患
- 脊髄小脳変性症
- 筋萎縮性側策硬化症
- ギラン・バレー症候群
- 糖尿病性抹消神経障害
- ベーチェット病
- 膠原病
- 筋ジストロフィー
- 多発性筋炎
- 重症筋無力症
- 加齢
- 食道アカラジア
- 強皮症
- 胃食道逆流等
嚥下検査
嚥下検査法をリストにしてあります。説明は簡易検査(スクリーニング)、嚥下に関わる検査(VF,VE)に記載してありますので、あわせてご覧ください。
スクリーニング
- 反復唾液嚥下テスト(Repetitive saliva swallow test : RSST)
- 水飲み検査
- 改訂水飲み検査(Modified Water Swallowing Test:MWST)
- フードテスト(Food Test:FT)
- 頸部聴診法
検査
- 嚥下造影検査(swallowing videofluorography:VF)
- 嚥下内視鏡検査(swallowing videoendoscopy:VE)
嚥下訓練法
嚥下訓練法をリストにしてあります。いくつかの説明は嚥下体操、リハビリテーション(間接訓練)、リハビリテーション(直接訓練)に記載してありますので、あわせてご覧ください。
基礎訓練(間接訓練)
- 嚥下体操
- 頸部可動域訓練
- 口唇・舌・頬のマッサージ
- 氷を用いた訓練(氷なめ)
- 舌突出嚥下訓練(舌前方保持嚥下訓練)
- チューブのみ訓練
- 頭部挙上訓練(シャキア・エクササイズ Shaker exercise)
- バルーン法(バルーン拡張法,バルーン訓練法)
- ブローイング訓練(Blowing exercise)
- プッシング・プリング訓練(Pushing exercise/Pulling exercise)
- 冷圧刺激(Thermal-tactile stimulation)
- のどのアイスマッサージ
基礎訓練および摂食訓練
- 息こらえ嚥下法< Supraglottic swallow >(声門越え嚥下法,声門閉鎖嚥下法),強い息こらえ嚥下法,喉頭閉鎖
嚥下法< Super-supraglottic swallow >< Pseudo-supraglottic swallow > - 頸部突出法
- 咳・ハッフィング(Coughing, Huffing, Forced expiration)
- 舌接触補助床(Palatal Augmentation Prosthesis:PAP)
- 前頸皮膚用手刺激による嚥下反射促通手技
- 電気刺激療法(Electrical stimulation therapy)
- 努力嚥下(Effortful swallow,Hard swallow)
- 軟口蓋挙上装置(Palatal lift prosthesis:PLP)
- バイオフィードバック(Biofeedback)
- メンデルソン手技(Mendelsohn maneuver)
- K-point 刺激
摂食訓練(直接訓練)
- 嚥下の意識化(Think swallow)
- 頸部回旋(Neck rotation,Head rotation) (別名)横向き嚥下
- 交互嚥下
- 食品調整
- スライス型ゼリー丸飲み法
- 一口量
- 体幹角度調整
- Chin down(頭部屈曲位,頸部屈曲位,Chin tuck)
- 一側嚥下(健側傾斜姿勢と頸部回旋姿勢のコンビネーション)
- 鼻つまみ嚥下
- 複数回嚥下,反復嚥下
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